遺言 の強いミカター遺言執行者とは
遺言は亡くなった人にとっての最期の意思表示です。
相続人となる残された家族にとっても財産の分け方を示す意味で非常に有用な法的手段といえます。
それならば、公正証書にせよ自筆にせよ遺言をきちんと残してさえいれば、それで良いのでしょうか?
実はあまり気にかけないかもしれませんが、遺言は「その内容が実行されてはじめて意味を為す」ということを忘れてはいけません。
そうでなければ、遺言は単なる「絵に描いた餅」となってしまいます。
本ブログはそこに焦点を当てて、作成した遺言の内容をどのように実現するのかについて有効な手段をお知らせします。
遺言はどのように実行するか
"遺言執行者" という役割をご存じでしょうか?
民法(抄)
【第1012条】
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
【第1015条】
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為の効果は、相続人に対して直接にその効果を生ずる。
遺言執行者とは、遺言により指定されることが多く、その役割は「遺言の内容を実現する」ことにあります。
遺言執行者が定められていない場合には、銀行預貯金の解約払い戻しにはじまり、不動産の名義書き換えまで全てを相続人全員で一つ一つ手配し実行していかなければなりません。
しかし、遺言執行者がきちんと定められていれば、民法に定めある権限者として遺言執行を円滑に進めることができます。
遺言執行者は、その業務にあたり一定の報酬請求権を有します。
しかし、それだけでなく様々な義務を負う責任の重い役割でもあります。
- 報告義務:相続人の請求に対して「いつでも」状況の報告をする必要あり
- 受取物引渡し等の義務:受領した金銭やその他の物、収受した果実当を相続人に引き渡す必要あり
- 任務の開始、通知義務:遺言執行者に就任したら直ちに任務を行ったり、相続人に通知する必要あり
- 財産目録の作成・交付義務:相続財産の目録を作成し、相続人に交付する必要あり
- 補償義務:相続人に引き渡すべき金銭を消費したときは、利息を含めて支払う必要あり
このように、遺言執行者は遺言執行に関する様々な権利義務を有します。
その執行業務がどのようなものか、以下に列挙します。
①遺言執行者就職の通知
この通知は「相続人」だけでなく、「受遺者」のほか「執行手続きの対象となる金融機関など」になります。
通知の手段は主に2つあり、「郵送」もしくは「集会の場での報告」です。集会の場というのは、例えば四十九日法要のときなどを指します。
通知には大きく2つの効果があります。
1つは、相続人によって遺産の処分行為等がなされないよう防止する効果です。
もう1つは、金融機関への通知で遺言者名義の預金の払戻しを防止する効果です。
②調査・管理
まず、相続人の調査を行うことが重要です。
推定相続人が誰なのか特定することから遺言執行は始まります。
実務では、遺言の作成サポートを行った行政書士が既に戸籍などを一通り集めている場合があるので、大幅に手間が軽減されます。
次に、遺言書に記載されている財産の有無や変動も調査しなければなりません。
遺言者は遺言に記載した財産を処分できないわけではありません。
そのため、遺言に書いてある財産に変化が無いかどうか一つ一つ確認していきます。
次に、財産目録の作成を行います。
財産目録の作成は、遺言執行者にとっても重要です。
なぜなら、相続財産の状態を明らかにすることで、遺言執行者の管理処分権の対象を明確にすることになるからです。
個々の価額を算出するにあたっては、別途、税理士等と連携する必要も出てくることがあります。
③銀行への遺言執行
銀行には、「残高証明書の請求」を行います。
遺言者の口座に全額でいくらの財産が残っているのかを証明してもらうための手続きです。
その上で、遺言の内容に従い銀行口座の預貯金を相続する人に遺産が移転するよう「相続届」を提出します。
そうすると、相続届で指定した口座へ遺産が振り込まれます。
④不動産の遺言執行
不動産の名義書き換えには司法書士と連携して臨みます。
まずは、登記事項証明書を取得して不動産を特定し、かつ、不動産の権利関係に問題がないか調査します。
そして、必ず現地へ赴き、土地・建物どちらにせよ第三者の占有状態が無いかどうか確認が必要です。
それらに問題がなければ、司法書士により相続する人に遺産の登記名義を移転します。
それら一連の遺言執行が完了したら、遺言執行者は相続人及び受遺者に対して「遺言執行事務終了通知」並びに「顛末報告書」を通知します。
こうして遺言の内容が実現されたら遺言執行者はその役割を終えることになります。
かなり途中を端折って記載していますが、実際の実務では金融機関での手続きが煩雑なために疲れ切ってご相談にくる方も少なくありません。
遺言の内容を実行する場合に迷ったら、「そうだ、行政書士に相談しよう」と気軽にお声をかけてください。