最強の節税!? 住宅ローン控除とは
不動産を購入するとき、不動産業者やハウスメーカーの営業マンが口を揃えて言うのが「住宅ローン控除」です。
この住宅ローン控除とはどのような制度なのでしょうか?
本ブログでは、不動産と関係の深い「住宅ローン控除」について記します。
なお、本ブログでは税に関する「制度」の内容を簡単にご紹介するものです。
個別具体的な税務の相談や計算などは必ず近隣の税理士・所轄の税務署へ確認してください。
《 このページの目次 》
私たちが支払う身近な税金
まず、働く私たちが払っている主な税金について確認しましょう。
特に重要なカギを握るのが、「所得税」と「住民税」です。
住宅ローン控除の説明でよく言われるのが、「税金が返ってくるお得な制度ですよ!」という一言です。
ここで言う税金が「所得税」と「住民税」になります。
一般的なサラリーマン家庭の場合、「所得税」は源泉徴収票を見ると1年分の支払額が書いてありますので見てみてください。
「住民税」は毎年5~6月になると会社から住民税決定通知書として渡されるので見た覚えのある方も多いかもしれません。
多くの場合、「所得税」「住民税」ともにサラリーマン個人が自分で支払うものではないことが大きな特徴です。
どちらの税金も会社がサラリーマン個人の代わりとなって支払っているため、自分が年間でどれくらいの税負担を負っているのか把握していない方も多いと思われます。
所得税
そもそも「所得税」とはどのような税金でしょうか。
まず、所得税は「個人の課税所得に対してかかる税金」で国税です。
そして、「課税所得」には種類があり下記の10種類となります。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
一般的なサラリーマン家庭の場合で課税所得は、当然ながら「給与所得」でしょう。
つまり、1年間の給与総額(いわゆる総支給額)から一定の控除(所得控除といいます)を差し引いたものが「課税所得」となります。
その課税所得に対して一定の税率(超過累進税率)を掛けて計算すると「所得税」が算出できる仕組みです。
【 給与所得(年収) - 所得控除 = 課税所得 】
【 課税所得 × 所得税率 = 所得税額 】
なお、令和19年分までは別途「復興特別所得税」が2.1%かかりますが、今回は割愛して考えることにします。
所得税計算の基本
では、例を挙げて実際に所得税を計算してみましょう。
給与所得が500万円のサラリーマン家庭があったとして、まず、「課税所得」を算出することになります。
基本としては、【 給与所得 - 所得控除 = 課税所得 】となりますから所得控除を洗い出していく必要があります。
所得控除には多くの種類があり、全部で15種類にのぼります。
ここで全ては説明できませんが、主なものに下記があります。
- 基礎控除 例:48万円 ⇒ 個人の合計所得金額が2,400万円以下
- 社会保険料控除 例:150万円 ⇒ 健康保険や年金、雇用保険などの保険料
- 配偶者控除 例:38万円 ⇒ 個人の合計所得金額が900万円以下
- 扶養控除 例:38万円 ⇒ 控除対象扶養親族がいる場合
500万円 - 274万円 = 226万円(課税所得)
このように算出した課税所得に所得税率を掛けることになります。
所得税の税率はいくら? 超過累進税率とは?
所得税の税率は一定ではありません。
5%からスタートして課税所得の額が上がるにつれて最大45%まで7段階で徐々に上がっていきます。
このようなシステムのことを「超過累進」と呼んでいます。
それぞれの税率ごとに「控除額」も定められています。以下の算式で計算できます。
【 課税所得 × 税率 - 控除額 = 所得税額 】
課税所得 0円~1,950,000円 5% 控除0円
1,950,000円~3,300,000円 10% 控除97,500円
3,300,000円~6,950,000円 20% 控除427,500円
6,950,000円~9,000,000円 23% 控除636,000円
9,000,000円~18,000,000円 33% 控除1,530,000円
18,000,000円~40,000,000円 40% 控除2,796,000円
40,000,000円~ 45% 控除4,796,000円
これを先の事例であてはめると以下のようになります。
226万円 × 10% - 97,500円 = 128,500円
大雑把ではありますが、このようにして所得税の額が決まります。
住民税とは何か
次に住民税についてです。
まず、住民税を支払うのはなぜでしょうか?その趣旨を理解することからスタートしましょう。
住民税は簡単にいうと、「地域社会の会費」といえます。
市町村民税と都道府県民税に分かれており地方税です。
私たちの生活には多くの行政サービスが存在しています。
- 学校教育
- 公共施設
- 上下水道
- 福祉
- 消防
- 救急
- ゴミ処理
ここに挙げただけでも、いかに身近で必要不可欠なサービスかがわかります。
当然ですが、こうしたサービスにはコスト(費用)がかかります。
この費用の財源を作り出すためのものが「住民税」=「地域社会の会費」なのです。
住民税の種類
住民税には「個人住民税」と「法人住民税」があります。
住宅ローン控除は、このうち「個人住民税」にかかわる制度です。
そして個人住民税には「均等割」と「所得割」の2種類があります。
「均等割」は所得金額にかかわらず、一律に負担する住民税です。
均等割は市町村民税1,500円+都道府県民税3,500円で合計5,000円(総務省が定める原則)とされています。(令和5年度まで)
ただし、エリア(県や市町村)によっては、独自の条例を定めて税金が上乗せされている場合もあります。
「所得割」は所得金額の応じて市町村民税6%+都道府県民税4%の合計10%とされています。
これら「均等割」+「所得割」の合計が「住民税」となります。
住民税計算の基本
住民税も所得税と同様に課税所得を算出していく必要があります。
まずは、給与収入の総額から必要経費となる給与所得控除を差し引きます。
給与所得控除の速算表は以下の通りです。
給与の収入金額 1,625,000円以下 控除 55万円
1,625,000円超~1,800,000円以下 控除 収入金額 × 40% - 10万円
1,800,000円超~3,600,000円以下 控除 収入金額 × 30% + 8万円
3,600,000円超~6,600,000円以下 控除 収入金額 × 20% + 44万円
6,600,000円超~8,500,000円以下 控除 収入金額 × 10% + 110万円
先の事例でいくと、500万円 × 20% + 44万円 = 144万円(給与所得控除額)です。
そうすると、500万円 - 144万円 = 356万円が所得金額となります。
次に、この所得金額356万円から各種の所得控除を差し引きます。
住民税の計算における所得控除は14種類と多くの項目がありますので、ここでは代表的なものだけ挙げてみます。
- 基礎控除 例:43万円(最高)
- 配偶者控除 例:33万円(最高)
- 扶養控除 例:33万円(一般 16才以上19才未満)
356万円 - 109万円 = 247万円(課税所得)
この課税所得に対して10%の住民税率を掛けた247,000円が住民税額となります。
住宅ローン控除は節税の効果大!
ここまで見てきた通り、事例の場合には以下のような税金が算出できました。
【 所得税 】 128,500円
【 住民税 】 247,000円
住宅ローン控除が「お得な制度!」と言われる理由がここからです。
税金の計算には様々な「控除」がありますが、一見するとどれも同じにみえます。
しかし、住宅ローン控除の特徴は単なる控除ではなく、それが「税額控除」であるという点です。
税額控除は名前の通り、最終的に確定した税金の額(上記の所得税・住民税など)から直接に差し引かれるという性質を持っています。
所得控除のように税額を算出する前段階でチョコチョコと割り引かれるものではなく、ダイレクトに税額そのものを割り引いてくれるということです。
住宅ローン控除の一般的な計算方法をみていくと、その節税効果の大きさがわかります。以下、みてみましょう。
住宅ローン控除計算の基本
住宅ローン控除は国の政策による時限的な制度です。
そのため、不動産を購入(または新築)した時期や入居する時期によって計算方法が異なります。
ここでは、わかりやすくするために「一般の新築住宅・令和5年中に居住開始」のパターンとしましょう。
この場合、住宅ローンの年末残高(3,000万円を限度) × 0.7% = 210,000円(控除限度額) が基本的な考え方です。
控除期間は13年間ありますから、毎年の年末が到来するたびに同様の方法で控除限度額が算出されます。
ご存じの通り、住宅ローンは毎月ごと徐々に支払いがなされていきますから、「年末残高が減る=控除限度額も減る」ことになります。
しかし、初年度だけで考えても最大で210,000円もの税額控除(限度)があるわけです。
事例の所得税は128,500円でしたから、この場合には所得税の「全額」が住宅ローン控除によって差し引かれます。
実際には、一般的なサラリーマン家庭だと128,500円を源泉徴収で先払いしていますので、住宅ローン控除によって「支払い済み所得税が返金される(還付される)」ということです。
そうすることで、その年の所得税が0円になる節税効果となります。
まさに効果大といえます。これが不動産業者やハウスメーカーが声を大にする理由です。
住民税からも差し引ける◎な制度
ここで、先ほどの計算では控除限度額が210,000円ありました。
しかし、そもそも支払っている所得税は128,500円です。
いくら控除限度額が210,000円あったとしても、実際に支払った所得税の額を超える分については差し引くことができなくなってしまいます。
210,000円 - 128,500円 = 81,500円
この余った控除限度額81,500円はどなるのでしょうか?
実はこの余った控除限度額はさらに住民税からも差し引くことが可能です。
ただし、上限があり97,500円までとなります。
事例では住民税の額が247,000円ありましたので、ここから控除限度額分の余った81,500円を差し引けます。
一般的なサラリーマン家庭の場合、住民税は1年分をまとめて支払うのではなく月々の給与から差し引いて支払っています。
本来なら 247,000円 ÷ 12 = 約20,600円/月々 が住民税です。
それが、( 247,000円 - 81,500円 ) ÷ 12 = 約13,800円/月々 まで減額されます。
住宅ローン控除は資産形成
このように、住宅ローン控除は上手に使うことで所得税と住民税を節税することができます。
住宅を購入するとき住宅ローンがつきものですが、単なる借金として怖がらずに13年間をかけた資産形成と捉えることが重要です。
低金利の経済情勢の場合、手元に資金(預貯金など)があれば、その資金を不動産の購入に使わずに住宅ローンで全額をまかなうことも一つの方法でしょう。
そうすれば、住宅ローン控除で節税ができますし、使わずに残った手元の資金(預貯金)を運用することで両得の資産形成が可能です。
ただし、客観的なアドバイスが必要になりますので是非、行政書士・宅地建物取引士の私へご相談ください。