もうヤダ!離婚だ‼…その前に何決める??

前回、別ブログでは離婚の方法が4種類あることを書きました。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
  • 審判離婚
  • 裁判離婚

以上の4つでしたね。

このうち、夫婦である当事者の協議のみで柔軟に離婚することができるのが協議離婚です。

離婚するカップルの内で実に88.3%がこの協議離婚を選択しています。

当事者同士の話し合いのみで済むことから、費用面の負担もないので当然の結果ともいえそうです。

しかし一方で、当事者の話し合いが法的にみてスキのないものになっているかどうかは別問題です。

今回は、協議離婚にありがちな様々な法的リスク・問題点・検討点についてクローズアップしてみたいと思います。

もし、離婚を検討している方がいたらご自身の協議内容と比較してみることをオススメします。

親権・監護権

「親権」とは子を監護、教育するため父母に認められた権利義務のことをいいます。

原則として、親権は父母が共同して行使します。

しかし、父母が離婚した場合には、どちらか一方の単独親権となります。

そのため、協議離婚する場合で夫婦に未成年の子がいるときは夫婦の一方を親権者として指定する必要があります。

協議離婚は夫婦が互いに協議して柔軟に親権者となる者を決定することができます。

仮に協議が難航し、調停・審判・裁判による離婚となった場合には「子の利益」に適うか否かを指定の基準として親の監護能力、経済的家庭環境のほか、子の年齢、環境の変化への適応性、兄弟姉妹関係などを総合考慮して親権者が指定されます。

なお、監護権については親権のうち「身上監護権」のことを指します。

子の心身の成長のための教育及び養育を中心とする権利義務の総称であり、本来は親権の一内容として包含する概念です。

しかし、離婚する場合や認知する場合には、親権と切り離して「監護者」と「親権者」を別個に定めることも可能となります。一般には例外といえますが参考までに。

面会交流

面会交流とは離婚後又は別居中に子を監護教育していない親(非監護親)が、その子と直接面会したり面会以外の方法で交流する権利です。

間接的な面会方法には、手紙やメールでのやり取りのほか電話、ビデオ通話等があります。

協議離婚においては、この面会交流についての取り決めがなされないままになっていることが非常に多いです。

面会交流は子の心身の発達や情緒を育む上でも重要な事項ですから、子にとって最適となるよう夫婦が互いに誠意をもって協議することが大切です。

子の年齢、負担を考慮して協議条項を定めるのが原則ですが、回数・方法を定めることのほか履行に応じない監護親がいた場合の履行確保にも踏み込んで条項化することもあります。

養育費

養育費といえば、離婚に関するキーワードでは最も有名ではないでしょうか。

養育費は未成熟な子が独立生活できるまで必要とされる費用全般を指します。

養育費の負担義務は、生活扶助義務ではなく生活保持義務であると考えられていることに注意が必要です。

生活保持義務は負担者の余力の有無に関係なく資力に応じて相当額を支払う義務をいいます。

ですから、調停・審判・裁判まで至った場合の養育費の決定においては負担義務者(親)の生活水準と同等の生活水準を未成熟な子が維持することができるか否かという観点で判断されることになります。

協議離婚においては、この養育費の算定をどのようにするかが夫婦の間での紛争を生み出すことが多くなります。

従来は実費方式・生活保護基準方式・標準生活費方式・労研方式など様々な基準が存在しており、また、計算方法が複雑で調停や審判も長期化することが問題視されていました。

そのため、最近では家庭裁判所によって夫婦それぞれの収入などから養育費の目安を算出できる算定表が発表されています。

算定表はあくまで画一的な目安であることと、個別具体的な条件が定まらなければ事案ごとに正確な養育費とはなりえないことは注意が必要です。

また、養育費は権利者(支払いを受ける側の親)からすれば多ければ多いほど離婚後の生活(子の教育費など含む)が楽になります。

しかし、単に養育費を高額に設定したところで相手方に実際の支払い能力が無い場合には意味をなしません。

婚姻中から一方がギャンブル好きであるとか、転職歴が多いなど根本的な問題がある場合には養育費の設定は注意する必要があります。

養育費の支払いは原則として定期金払い(例:毎月〇日に〇円を支払う)となりますが、相手方が継続的な支払いが将来にわたって見込めない場合や不誠実な対応の懸念がある場合には離婚時一括の一時払いも検討しましょう。

ただし、一時払いの内容によっては贈与税が発生することもありますので注意が必要です。

養育費は非常に長い期間で金銭のやり取りが続くという特徴があります。

そうすると、途中で相手方が養育費の支払いを怠ると困りますから、場合によっては公証役場にて執行受諾文言付公正証書(執行証書)を作成して強制執行手続がとれるようにしておくことが重要です。

財産分与

財産分与請求権は、離婚した夫婦のうち一方が他方に対して財産の分与を求める権利をいいます。

民法は夫婦別産制を基本にしており、一方配偶者名義(例:夫)の財産の方が大きく上回るなど夫婦間に経済的格差が生じてしまいます。

そこで、離婚するときにこの格差を調整すべく財産給付を求めることができるとするのが財産分与です。

財産分与の中心的要素は清算的要素といえますが、おおきく下記3つが要素となります。

  • 夫婦が婚姻中に協力して蓄財した財産の清算(清算的要素)
  • 離婚後の経済的弱者に対する扶養料(扶養的要素)
  • 相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされたことについての慰謝料(慰謝料的要素)

また、夫婦の共有財産として不動産を共有している場合も多くあります。

しかも、夫婦ともに連帯債務や連帯保証の関係になっていたり、ペアローンを組んでいることも多いです。結婚当初はまさか離婚などすることを考えていないので当然ですね。

このような場合、夫婦が離婚するからといってローンを貸し出した金融機関がローン支払いを免除するとか、保証人の地位から解放してくれるということはあまりありません。

そのため、離婚はしてもローンの支払いが数十年にわたって続くこともあり得ます。

夫婦で共同してマイホームを購入した方の場合、事前に(離婚する前に!)金融機関との折衝が必要となるので注意が必要です。

慰謝料

離婚に伴う慰謝料は、離婚によって被る精神的苦痛による損害の賠償といえます。

よくあるのは、夫婦の一方が不貞行為(浮気)により精神的苦痛を与えてしまった場合です。

不貞行為の事実によって不法行為が成立し、結果として相手側に慰謝料を支払う必要が出た場合には離婚協議において慰謝料も請求することができます。

財産分与との違いは、財産分与が有責性を問題としていないところ、慰謝料は有責配偶者が支払い義務を負うことが多いという点です。

基本的には下記のような事実があると慰謝料を請求されることになります。

  • 配偶者の不貞行為
  • 暴力、犯罪、悪意の遺棄
  • 婚姻生活の維持に協力しない
  • 性交渉拒否、性的不能

なお、慰謝料の金額について明確な算定基準はなく、個別具体的な事例ごとに細かく判断されることが多いです。

ただ、裁判の統計などからすると100~300万円がほとんどで、中央値は150万円ほどといえます。

年金分割

年金は自身がどのタイプの年金加入者であるかを把握するところから始まります。

日本の公的年金制度において保険者には主に下記の3タイプがあります。

  • 第1号被保険者 (主に自営業者、農業従事者など)
  • 第2号被保険者 (企業に勤務している者など)
  • 第3号被保険者 (サラリーマンの専業主婦など)

分割対象の年金は「被用者年金部分」であることに注意が必要です。

被用者年金部分とは、厚生年金や共済年金など3階建ての公的年金制度の中でいうところの「2階建て部分」をいいます。

つまり、国民年金(1階部分)や企業年金(3階部分)には年金分割の効力は及びません。

具体的には、夫婦が婚姻~離婚するまでの厚生年金(または共済年金)の保険料納付記録の合計額を当事者間で分割します。

年金自体を分割するわけではなく分割を受けた側が分割された分の保険料を納付したとして扱われます。

その保険料に基づいて算定された老齢厚生年金を将来に受け取ることができるようになる訳です。

按分割合は上限が50%となりますが、多くは上限そのままを協議して定めることが多いです。(按分割合0.5)

このように、一言に「離婚」とか「協議」といっても法的に検討すべき事項は多くあることがわかります。

協議での離婚が整わない場合、調停や裁判が待っていますが当然ながら多額の弁護士費用が発生します。

しかし、協議の段階で正しい知識で離婚協議書を作成しておけば万一のときも安心です。

離婚を検討し始めたら、「そうだ、行政書士へ相談しよう!」と気軽に声をかけてください。

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