不要な土地どうする?相続土地国庫帰属制度
「相続」や「遺贈」という言葉、何となく得しそうな響きですよね。
ところが、意外にも得するばかりではありません。
地方に住む親が持つ不動産(土地・建物)を相続するとき、「財産的な価値のない不動産」であることも多いのです。
本ブログでは、そんな「価値のない不動産」を相続したらどうしたら良いのか?に焦点をあててみます。
《 このページの目次 》
「価値のない不動産」なのに維持管理にお金がかかる?
さて、「価値がない不動産」を相続したら、なぜ放置してしまうのでしょうか?
ちなみに、「価値がない」という意味としては、誰かに売ろうとしても買ってもらえない、貸そうとしても借りてもらえないというレベルを指します。
例としては、地方の農村を思い浮かべてください。
見渡す限りの農地のうち1つだけを相続したら、農家でもない人はどう活用すればよいでしょうか?
市街化調整区域の雑草雑木だらけの土地を相続したら?家を建てることもままなりません。
朽ち果てたボロボロの建物ごと土地を相続したら??建物を取り壊すだけでも結構なお金がかかってしまいます。
そんなわけで「価値のない不動産」は放置されがちな存在なのです。
ところが、実は放っておけない理由が大きく2つあります。
放置しておけない理由① 所有するだけで税金は発生する
「価値のない不動産」を放っておけない理由の1つ目は、税金です。
不動産は所有しているという事実だけで、毎年「固定資産税」がかかります。
そもそも財産的な価値がない不動産ですから、税金の金額そのものは大きな負担ではありません。
しかし、1年ごとでみれば少ない金額(数千円とか)だとしても、自分の一生分でみるとどうでしょうか?
自分だけで済めば良いのですが、自分の死後はどうなるでしょうか?
さらに相続されて子や孫の代まで永遠に不要な税金を支払い続けることになります。
やはり不要な出費とわかっていながら、一生かけて税金を支払っている状況は何とかしたいと思うのが通常です。
放置しておけない理由② 所有するだけで維持管理の責任がある
「価値のない不動産」を放っておけない理由の2つ目は、維持管理責任です。
ただ所有しているだけなので、「放置しておくのは自分の自由だ」と思いがちです。
しかし、土地にせよ建物にせよ「所有」しているだけでも維持管理には法的な責任がついて回ります。
例えば、土地を放置した結果、草木が生い茂って隣地に迷惑をかけることがあります。
道路に面した土地であれば、道路標識に影響を与えるなどして交通事故を引き起こすことも考えられます。
また、朽ち果てた建物は放置して倒壊したり、ブロック塀などの工作物が地震などで倒壊することもあり得ます。
万が一、そういった要因で他人(通行人など)がケガを負ったり、亡くなるようなことがあったら誰が責任を取るのでしょうか?
これは、「その不動産の所有者」ということになります。
ここで大切なのは、台風や大雨、地震などの自然災害が引き金となって倒壊が生じたとしても言い訳にならないという点で、最終的な責任は「不動産の所有者」であるということです。
非常に大きな責任があることがわかると思います。
相続土地国庫帰属制度を活用しよう!
そこで活用すべきなのが「相続土地国庫帰属制度」です。
まだ新しい法律なので具体的に施行されるのは 令和5年4月27日 からとなります。
正式な法律名は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「帰属法」という)です。
この法律が成立した背景には、前述のような「価値のない不動産」を放置する事例が全国で相次いでいることが挙げらます。
国としては「放置されてしまうと困る」ので、それなら一定の条件を整えた土地を国が引き取ることができるようにしました。
それには条件があります。主なものは下記の通りです。
- 申請者は土地の所有者(相続等により土地の所有権を取得した者)
- 建物や管理・処分を阻害する工作物がある土地は不可
- 土壌汚染や埋設物がある土地は不可
- 崖がある土地は不可
- 権利関係に争いがある土地は不可
- 担保権等が設定されている土地は不可
- 通路など他人によって使用される土地は不可
- 法務局による審査手数料がかかる場合がある
- 標準的な管理費用10年分の負担金がかかる(目安:原野20万円、市街化区域の宅地200㎡80万円)
自分で申請するのが大変なときは
このように便利な相続土地国庫帰属制度ですが、実際に国へ帰属することができるかどうかなど、要件の検討は非常に専門的で複雑です。
これを一個人の方が全て判断して申請書類をそろえるのは非常に大変といえます。
そこで帰属法を管轄する法務省では申請書類の作成を代行する国家資格者の一人として「行政書士」を指定しています。
日本国内では相当な面積の放置された土地があると言われています。
国が新しい法律と制度を用意してまで「放置」を防ごうとしていますので、ぜひ、制度の活用を検討してみてください。
要件が当てはまるのか気になったら「そうだ、行政書士へ相談しよう」と気軽に声をかけてください。