固定資産税のヒミツ
不動産に関する税金はたくさんありますよね。
その中でも皆さんに身近なものは『固定資産税』ではないでしょうか?
今回は『固定資産税』について少し記したいと思います。
《 このページの目次 》
固定資産税とは何か
まず『固定資産税』の概要をつかみましょう。
その名の取り、『固定資産』に課税されるものが『固定資産税』ですが、では、『固定資産』とは何を指すのでしょうか?
この定義は「地方税法」に記載があります。
地方税法(抄)
第341条
固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。
二 土地 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。
三 家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。
四 償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。
地方税法に規定されるように、『固定資産』というのは ➀土地 ➁家屋(建物) ③償却資産 の3つです。
③償却資産は一般にあまり馴染みが無いと思いますので、本ブログでの詳述は割愛します。
そうすると、概要として『固定資産税』というのは ➀土地 と ➁家屋(建物) に課税されるものだといえます。
誰が課税して、誰が納税するのか?
では、この『固定資産税』を課税するのは誰なのでしょうか?
地方税法をみてみましょう。
地方税法(抄)
第342条1項
固定資産税は、固定資産に対し、当該固定資産所在の市町村において課する。
このように、『固定資産税』はその固定資産である 土地や家屋(建物) が所在する「市町村」が課税するということになります。
例えば、ある人がA市にマンションをB町には土地を所有していたとすると、マンションに対しての固定資産税はA市長から、土地に対しての固定資産税はB町長からバラバラに課税の通知がなされます。
あくまで、「市町村ごと」の区切りによって課税がなされるということですね。
次に、誰がその固定資産税を納税するのか?についてです。
地方税法をみてみましょう。
地方税法(抄)
第343条1項
固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。
このように、一部の例外はあるものの基本的に『所有者』が固定資産税を納税する義務を負っています。
話が逸れますが、もし『所有者』が行方不明の場合には誰が納税すると思いますか?
この場合、その市町村が相当の努力をして探索をしても所有者を見つけることができない時には、例外的にその固定資産の『使用者』が納税の義務を負うことになるんです。
もし、賃貸で家を借りた場合に大家さんである所有者が行方不明になってしまったとしたらご注意を!
いつ・いくらくらい課税されるのか
『固定資産税』の課税は1年のうちで一体いつになされるのでしょうか?
地方税法(抄)
第359条
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
地方税法では固定資産税の賦課期日は1月1日とされているので、毎年1月1日の時点で固定資産税の所有者である方に課税されます。
これを逆手に考えると、極端な話で言えば「1月2日」の時点で所有者となった場合には丸々1年分の固定資産税は課税されずに済みます。
あまり狙ってできることではありませんが、そうなったら少しお得ですね。
それから、『固定資産税』はいくら課税されるものなのでしょうか?
地方税法(抄)
第350条1項
固定資産税の標準税率は、百分の一・四とする。
地方税法では基本的に100分の1.4=1.4%とされていることがわかりますね。
詳しくいえば、この1.4%の税率も市町村ごとに条例でもって変更することが可能です。
そして固定資産には、この1.4%の税率を乗じる対象として、それぞれ『課税標準』というものが設定されています。
『課税標準』は市町村が固定資産1つずつに決定した「財産的な価格」と思ってもらえれば良いと思います。
土地には土地の課税標準価格がありますし、家屋(建物)には家屋の課税標準価格があります。
その課税標準に対して1.4%を乗じた金額が固定資産税となる訳です。
例として、課税標準1,000万円の土地を所有しているとしたら、1,000万円×1.4%=14万円(年間)の固定資産税が本則としてかかることになります。
なお、実際には小規模宅地の特例など本則の税額よりも低減される仕組みもあるので、個別の事情によって税額は変動します。
新築する家屋(建物)の固定資産税は同じになる?
前述の『課税標準』は市町村によってどのように決められているのでしょうか?
例えば、家屋(建物)は新築されることが多いですが、世の中に新築される家屋(建物)の『課税標準』は同規模であれば全く同じなのでしょうか?
ちなみに新築される家屋(建物)は、令和3年の1年間でも856,484戸にのぼります。
仮に、面積規模が同じ家屋(建物)だとしても、その中には「木造」もあれば「鉄骨造」もありますし、場合によっては大型マンションによくある「鉄筋コンクリート造」もある訳です。
当然ながら材質によっては経年変化による自然損耗の度合いも異なりますので、単に面積規模が同じというだけで、財産的な価格を示す『課税標準』まで画一的にしてしまうと少々乱暴になってしまいます。
そこで、市町村が固定資産税を算出するための『課税標準』を決定するにあたっては、税額に不公平が生じないよう 『評点基準表』 というものが存在しているのです。
この『評点基準表』は地方税法に基づいて総務省が公表していますので、全国の市町村がこの基準に従って『課税標準』を算出しています。これによって、課税額の平等が図られています。
意外と細かい!『評点基準表』
参考として、軒数の多い『木造』の家屋(建物)を例にして『評点基準表』をご紹介します。
『評点基準表』をご覧いただくとわかるように、項目が非常に多岐にわたります。
そして、おそらく、多くの方が気になるのが どんな家にしたら固定資産税が上がるのか? という点だと思われます。
以下に、主な固定資産税アップのポイントを記載します。
- 屋根材を瓦にする
- 屋根の勾配を急にする
- 屋根の軒の出を45cm以上にする
- 屋根にソーラーパネルを搭載する
- 屋根に天窓を取り付ける
- 基礎コンクリート高さを45cm以上にする
- 外壁材をタイルや漆喰壁にする
- 内装材を木やタイルにする
- カメラ付きドアホンを取り付ける
- 給湯器をエコキュートタンク式にする
- 洗面化粧台を120cm以上にする
- ビルトイン方式の空調設備(エアコン)にする
- 床暖房を取り付ける
- ホームエレベーターを取り付ける
- バルコニーを取り付ける
こうみると、意外と固定資産税が上がるポイントは多いものです。
新築の業界では日々新しい建材や快適な設備が生まれていますが、ハウスメーカーの言うまま取り付けてしまうと固定資産税にも影響があると言えそうです。
通常、家屋(建物)を新築すると1ヵ月~2カ月程度で該当する市町村の担当課が目視で確認にくることになります。
その後に、『課税標準』が決定されて固定資産税が課税されるという流れになります。
このように『固定資産税』は非常に細かい規定があり、また、生活に密着した税ということもあり様々な特例もあります。
不動産を購入したり、新築したりする際には『固定資産税』にも注目してみると良いでしょう。