分筆と合筆のこと
「広い土地の一部だけを誰かに売りたい」
「狭い土地だが複数をまとめて広い土地にしたい」
不動産、特に土地のこととなると場合によって、このような要望もありえますね。
今回はこれら『分筆』と『合筆』について記します。
分筆とは
分筆は1つの土地を分割して区画を変更することで2筆以上に分けることをいいます。
例えば「10番」という1筆の土地が存在したとします。
これを分筆する場合、「10番1」と「10番2」という2筆の土地に区画割りが変更されることになります。
すごく広い土地を所有している人が、その一部だけを売りたいときには分筆する必要がある訳です。
合筆とは
合筆は数筆の土地を統合して区画を変更することで1筆にまとめることをいいます。
例えば「10番」と「12番」の2筆の土地が存在したとします。
これを合筆する場合、「10番」という1筆の土地に区画割りが変更されることになります。
狭い土地を複数に分けて所有している人が、その全部をまとめて利用する場合などには合筆します。
合筆後の地番は、原則として合筆する複数の土地のうち一番若い地番を残すことになります。
そのほかの土地は『閉鎖』されます。
ただし、合筆の場合には分筆にはない一定の制限があります。
以下の2点です。
物理的な制限
1つ目の合筆できない場合は、物理的に土地が連続しておらず離れていることです。
端的に言えば、現実に合筆しようとする各土地がくっついていなければならないということです。
また、地目が異なる土地(例:宅地と畑など)も合筆ができません。
権利的な制限
2つ目の合筆できない場合は、権利的に同一性が無い場合です。
わかりやすい例でいえば、所有者が異なることが挙げられます。
その他、抵当権の設定状況が異なる場合なども考えられます。
よくある実務の留意点
このように土地の所有者の都合にあわせて『分筆』や『合筆』をすることになります。
しかし、場合によって上記の制限とは別の角度での問題から自分の自由にことが進まないことがあり得ます。
それは、隣接する土地の所有者が協力してくれないという場合です。
実は本当の実務において困るのはこのようなパターンになります。
土地の区画を変更する場合、具体的な実務では測量を行います。
土地家屋調査士という専門の資格者がメインになって作業を進めることが最も一般的です。
ちなみに、この場合の測量は確定測量と呼ばれます。
確定測量は非常に厳密な測量というイメージで差し支えないのですが、隣地の所有者(民民境界)だけでなく道路など公共物の所有者(官民境界)との間でも立会確認を行います。
その上で、測量成果や現実の境界線(所有権界・占有権界)に異議がない旨を立会証明書という形で書面に残します。
分筆ができない??
このように確定測量をすることで、自分の土地に接する全ての土地の所有者との間でモメ事が無いことを確定できます。
お役所(法務局)では紛争を防止するために、『分筆』『合筆』の申請に際しては、この確定測量・立会証明を求めてきます。
ただ、実際のところ世の中には様々な人間がいます。
中には、反社会勢力のような方であったり、単に非協力的な方も少なくありません。
時代が時代なだけに、こちらは何とも思ってないのに理由なく「詐欺ではないか?」とか「ダマそうとしている」などと疑われるケースもあります。
たまたま、自分が所有する土地に接する他の土地所有者がこれらのような方であると、まず順調に確定測量・立会証明は取得できません。
そうすると、お役所(法務局)では分筆などの登記申請が許可とならず、却下処分となることもあります。
自分のせいではなくても、です。
そのため、実務の現場では土地家屋調査士を中心に分筆のため、実は陰ながら大変な努力をしています。
- ほぼ毎日、朝昼晩と訪問を繰り返す
- 手紙などを用意してポストへ投函する
- 書留郵便や本人限定受取郵便を利用して登記住所に本人が不在であることを疎明する
- お車代やハンコ代として数千~数万円の金銭を渡す
ちなみに、散々こういった努力をしたとしてもなお、非協力的な所有者はいます。
この場合には、上記のような行為を経たことを疎明する資料を添付すれば、法務局も「特別な事情がある」と認定して立会証明がなくても登記申請を許可することもあります。
しかし、あくまでそれは「最終手段」であって、やることをやった後でなければ認められません。
このように、『分筆』と『合筆』は外からみているよりも非常に奥の深い作業です。
土地の所有者が『分筆』などを依頼したとき、作業・結果とも全て専門家や業者へ「お任せ」という態度の方が多く見受けられます。
しかし、実際は土地の所有者同士の方が長年の面識があったり、お隣同士で事情を知っていることもあります。
そのため、不動産コンサルティングの立場としては、事前に『分筆』や『合筆』は誰かが勝手にやってくれることではないという旨を本人へ理解してもらっています。
不動産の実務に就いている方も、一般の土地の売却者ご本人であってもこのことはよく覚えておきましょう。