農地転用に違反したらどうなる?

「農地転用って面倒!」という意見はきっと多いのではないでしょうか?

実際、行政書士として農地転用の申請をする立場でみても、単に申請書を起案するだけでなく付属書類として図面など多くの書類を必要とするので、およそ一般の方にとっては大変な手続きだと思います。

そうなると必ず出てくるのが「違反転用者」の問題です。

本来は都道府県知事の許可が必要な農地転用申請ですが、それを行わずに利用・転用してしまっている例は後を絶ちません。

今回は「農地転用に違反したらどうなるか?」について記してみようと思います。

違反転用者への対応策は主に2種類

農地法は違反転用に対して、主に2つの対応策を規定しています。

1つは行政処分、もう1つは罰則です。

以下、農地法の条文に基づいて解説します。

農地法(抄)

【第51条1項】

都道府県知事等は、政令で定めるところにより、次の各号のいずれかに該当する者(以下この条において「違反転用者等」という)に対して、土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、第4条若しくは第5条の規定によってした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(以下この条において「原状回復等の措置」という)を講ずべきことを命ずることができる。

一 第4条第1項若しくは第5条第1項の規定に違反した者又はその一般承継人

二 第4条第1項又は第5条第1項の許可に付した条件に違反している者

三 前2号に掲げる者から当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負った者又はその工事その他の行為の下請人

四 偽りその他不正の手段により、第4条第1項又は第5条第1項の許可を受けた者

罰則① 行政処分

まずは行政処分です。

許可権者である都道県知事等が主体となって違反状況を検討します。

そして必要があるとなれば、一旦許可した農地転用であっても取り消すことができます。

その他、条件を変更したり追加することもできますし、工事そのものを停止したり、終わった工事であっても原状回復させることもできます。

原状回復は仮に建築物を建てたとしても、解体して更地・農地に戻すということを意味します。

現実的に工事まで終わっていても原状回復まで求められるというのは非常に厳しい処分といえます。

この処分によって違反者が素直に応じてくれれば良いのですが、中には行政(都道府県知事等)の言うことを聞かない人もいます。

そのような事態を想定して農地法は以下のような規定も用意しています。

権力で強制できる!行政代執行

農地法(抄)

【第51条3項】

都道府県知事等は、第1項に規定する場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、自らその原状回復等の措置の全部又は一部を講ずることができる。~(中略)

一 第1項の規定により原状回復等の措置を講ずべきことを命ぜられた違反転用者等が、当該命令に係る期限までに当該命令に係る措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。

~(中略)

【同条第4項】

都道府県知事等は、前項の規定により同項の原状回復等の措置の全部又は一部を講じたときは、当該原状回復等の措置に要した費用について、農林水産省令で定めるところにより、当該違反転用者等に負担させることができる。

【同条第5項】

前項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法第5条及び第6条の規定を準用する。

このように、農地法では仮に違反転用者が任意に処分に応じないとしても、都道府県知事等が自ら原状回復等を行って代替的に実現してしまうことができるのです。

しかも、そのような代替的な実現行為をするにあたり、行政(都道府県知事等)が負担した費用は全て違反転用者へ転嫁されてしまいます。

加えて言うと、違反転用者がその転嫁された費用までも任意に支払わないとなれば「行政代執行法」に定められた徴収規定によって国家権力による強制的な支払い取り立てを受けます。

罰則② 懲役刑と罰金刑

次に罰則です。

罰則規定は農地法の第6章に規定があり、違反転用の抑止を目的としています。

また、平成21年の農地法改正において法人重科の措置が新たに設けられました。

農地法(抄)

【第64条】

次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

一 第3条第1項、第4条第1項、第5条第1項又は第18条第1項の規定に違反した者

二 偽りその他不正の手段により、第3条第1項、第4条第1項、第5条第1項、第18条第1項の規定に違反した者

三 第51条第1項の規定による都道府県知事等の命令に違反した者

【第67条】

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

一 第64条第1号若しくは第2号又は第3号 1億円以下の罰金刑

二 第64条又は前2条 各本条の罰金刑

このように農地法は違反転用者だけでなく、その法人に対しても罰則として懲役刑・罰金刑など重い規定を設けています。

これまで実際に安易な違反転用が行われたり、原状回復等の是正命令に任意に従わない違反者が多発したことから、農地法が違反転用をいかに抑制・防止したいと考えているのかが伺い知れます。

違反転用は行政書士へ相談を

このように農地法や農地転用は一般に非常に身近なものですが、その反面、立法趣旨・目的から非常に思い罰則も設けられています。

中には違反であることに気づかないまま、重い違反をしてしまっている方も少なくありません。

もし違反に気づいて困ったら「そうだ、行政書士に相談しよう」と気軽に声をかけてください。

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