農地所有適格法人とは
別ブログで「農地転用」がどういった手続きなのか色々とご紹介してきました。
今回は農地法に定義されている『農地所有適格法人』がいったいどのような組織のことなのか少し詳しく記したいと思います。
《 このページの目次 》
農地に特化した法人組織
ひとことで言うと、『農地所有適格法人』は規制の厳しい農地法が特別に農地の所有権の帰属主体として認めた民間の法人組織です。
所有権の帰属主体などと表現するとチョットわかりづらいのですが、ようは「農地を売ったり買ったりできる法人」ということです。
ただし、規制が厳しいことで有名な農地法ですから、その法人組織としての要件は非常に細かな基準が定められています。
概要
「農地所有適格法人」は、農事組合法人、株式会社(公開会社でないものに限る)又は持分会社です。
持分会社というのは一般にあまりなじみのない組織名です。
株式会社と比べて比較的に小さいことが多く、合名会社・合資会社・合同会社という3種類があります。
比較的に小規模なので、より機動力が求められる会社組織に向いている形態の会社です。
有名な合同会社にはAmazon日本法人やApple日本法人があります。
除外されていた株式会社
この農地所有適格法人制度の創設当初、「株式会社」については除外されていました。
本来、農地法の趣旨には農地の潰廃を防いだり、利益優先で農地を農地以外の目的で利用することを防ぐという目的があります。
そのような趣旨に照らしてみると、株式のように自由譲渡性を原則とする株式会社では農業従事者による共同経営的色彩の濃い農地所有適格法人制度になじまないと考えられたためです。
本制度では、あくまで「農地を効率的に経営して欲しい」という前提があるので、株式の譲渡で株式会社の構成員が変更されることで経営方針が頻繁に変更となれば、農地を農地として利用しなくなってしまう等の将来リスクもあったものと思われます。
しかし、その後は商法(現:会社法)で株式の譲渡制限規定が整備されるなどしたため、「公開会社でないものに限り」株式会社も農地所有適格法人として認められるに至りました。
公開会社でない、つまり株式に譲渡制限があれば自由に株式を譲渡することができないので、それなら安定した農業経営が期待できるからです。
このような変遷ひとつとっても、「農地法」がいかに農地を強い規制で守ろうとしているのかがわかりますね。
事業要件
まず第一に、農業所有適格法人の主たる事業は "農業" でなければなりません。
そして、この "農業" には農業に関連する事業であって農畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定めるものも含まれます。具体的には以下のようなものが想定されており、意外と広い概念によります。
- りんご生産の法人がりんごジュースの製造を行う
- 野菜生産の法人が料理の提供、弁当の販売や宅配を行う
- 農畜産物の貯蔵、運搬又は販売を行う
- 農業生産に必要な資材の製造を行う
- 自己の水稲の刈取りに加えて、他の農家等の水稲の刈取りの作業を行う
- 観光農園や市民農園など主として都市の住民による農作業の体験のための施設運営を行う
「主たる事業が農業」であるかどうかの判断は、事業年度前の直近3年における農業に関わる売上高が法人の事業全体の売上高の50%を占めているかどうかによります。(いわゆる処理基準)
議決権要件
この法人組織の組合員、株主又は社員については、もともと、農業を営む個人が協業して農業を営む組織との考え方だったことから、構成員は法人に農地等の権利を提供する者又は農業の常時従事者に限られていました。
しかし、それではほぼ農業に専業できる構成員でなければならず、法人の経営の安定や発展を図るという視点に欠けます。
そのため、平成27年の農地法改正によって構成員になれる者の制限は撤廃されました。
ただ、やはり最終的な経営方針の決定が農業者によって行われることを担保するため、別途、農業関係者の議決権割合が2分の1を超えることは要件とされています。
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本ブログでは詳細は割愛していますが、具体的な関係基準は省令などによって定められています。
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