共有と持分について

『共有』『持分』とは何でしょうか?

不動産取引に関わるときにだけ、皆さんが耳にする言葉かもしれません。

でも、実は不動産の共有や持分の設定は皆さんの生活にとって非常に重要な概念になります。

今回はこれら『共有』と『持分』について記します。

まず共有の話の前に、前提として重要な考え方についてです。

基本的に何かモノを所有するときには、『単有』(単独所有)が原則です。

一つのモノを使用収益したり、処分するときは単有の所有者一人だけで意思決定できる方がシンプルかつ合理的だからです。

ちなみに、使用収益とは「自分でモノを使う」「モノを利用して利益を得る」という意味であり、処分とは「モノを売る」「モノを廃棄する」という意味を指します。

しかし、そうはいっても場合によっては一つのモノを全員で共有することが必要なときもあります。

具体的には、

  • 複数の人たちでお金を出し合って不動産などを買ったとき
  • 亡くなった方の不動産を複数の人たちが一緒に相続するとき

このような状況は、現実によく起こり得ます。

そこで民法はモノの所有に関して『共有』『持分』の概念を規定しました。

民法(抄)

【第249条】

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

【第250条】

各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

例えば、100㎡の面積である1つの土地があったとします。

その土地を2人の人で共有(共同所有)する場合、50㎡ずつの面積で分けるのではなく、あくまで100㎡の1つの土地のまま『持分』という所有割合を各自2分の1ずつと設定して『共有』することになります。

念のため付け加えると、共有者の持分は各自の合意で自由に設定が可能です。

極端な例でいえば、片方が「100分の99」一方は「100分の1」としても構いません。

民法にある「相等しい」という規定は、あくまでも『推定』規定であるため、共有の当事者間において持分が2分の1ではないという事実があればそれを理由に変更してもよいのです。

さて、ここまでが『共有』と『持分』の概要でした。

問題はこの後です。

これまで説明してきた、『単有(単独所有)』『共有(共同所有)』によって何か実務的な違いはあるのでしょうか?

実は、ここに大きな違いがあります。

民法(抄)

【第251条】

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

【第252条】

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

『共有』にすることの問題点はこれに尽きます。

「自分の好きにモノを扱うことができなくなる」というデメリットです。

共有者が取ることができる行為は以下の3点です。

➀変更行為

モノを売って処分(換金)するような行為のこと。

これをするには、共有者全員の同意が必要となる。

➁管理行為

モノを貸して使用収益(利益を得る)するような行為のこと。

これをするには、共有者の持分(価格)の過半数が必要となる。

③保存行為

モノを修理して価値の減少を防ぐような行為のこと。

これをするには、共有者それぞれが単独で行って構わない。

条文を読んでわかる通り、共有者は各自一人だけではモノを処分することができません。

そして、誰かに貸して賃料で儲けたいと思っても過半数の同意が必要です。

唯一、共有者が単独でできることといえば、そのモノの価値を下げないようにする行為(例:修理など)くらいになります。

これを聞くと、「なんだか面倒だな」と思う方も少なくないのではないでしょうか?

自分で売りたいときに売って、貸したいときに貸すという自由が欲しいと感じるかもしれません。

そこでさらに民法は規定を設けました。

民法(抄)

【第256条1項】

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、(~以下省略)

一旦は一つのモノを共有することで落ち着いたものの、事後になってから変更行為・管理行為ができずに不都合が生じてしまった場合、共有者はそのモノを『分割』してもらうよう他の共有者へ請求することができます。

前述の土地の例でいえば、100㎡の1つの土地を共有物分割請求によって、物理的に50㎡ずつの2つの土地に分けて50㎡の土地を各自が単有(単独所有)するということになります。

こうすれば、50㎡の土地については各自が自由に使用収益できますし、処分もできる訳です。

このように『共有』と『持分』という概念は一見すると一つのモノを皆で所有できる合理的なシステムと思いがちですが、相続のように何代にも渡って権利が承継されることを考慮すると可能な限り選択しないことが理想的といえます。

実際、私たち実務家が相続などの案件をお手伝いする際にも、『共有』はオススメできないことをお伝えしています。

ただ、例外的にマイホームを購入する際の住宅ローン控除や住宅取得資金の贈与特例を利用する際など、共有が望ましいこともあります。いろいろ制度があり複雑ですね。

不動産取引や共有についてのことなど、詳しい法規の相談は「そうだ、行政書士へ相談しよう」と気軽に声をかけてくだだい。

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