認知とは何か

身近であまり聞かないもののドラマ等でよく耳にする『認知』とは何でしょうか?

本ブログでは『認知』に焦点をあてて記したいと思います。

認知と聞くと、なんとなく子どもを自分の子と認めること?という認識はあるかもしれません。

ざっくりしたところは、その理解で構いません。

ただ、念のため具体的な民法の定義をみておきましょう。

嫡出子とは

認知への理解を深めるにあたり、前提として『嫡出子』という概念を理解する必要があります。

嫡出子というのは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子のことをいいます。

当然、嫡出子であるということは=イコールその夫婦の子であるということ意味します。

ここで重要なのが、『婚姻関係にある』時にできた(生まれた)子であるという点です。

昔と違って時代が変わっているので、最近では「事実婚」というものが流行っていますよね。

この「事実婚」というのは、姓が変わることをはじめとする法律上の婚姻関係の煩わしさなどから事実上の夫婦関係さえあれば良いという価値観に基づいて、そのまま子どもを設けて出産・育児するという状態をいいます。

この事実婚それ自体は個人の価値観や自由という観点から、全く非難されることではありません。

しかし、現在の日本の法律である民法においては、そのような状態で生まれた子どもは『嫡出子ではない』ということになります。

民法(抄)

【第772条1項】

妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

【776条】

夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。

民法においては、「婚姻関係」という法律的な関係性を重視して、婚姻中に妻が妊娠したらその子は夫の子であるという推定が働くようになっています。

正直なところ、現実的には「不倫」する人もいますので、法律上の婚姻関係にあるというだけで=イコールその夫婦間の子とは言い切れない面はあります。

実際、そのような疑義がある場合には別途、嫡出否認の訴えや親子関係不存在の訴えなど訴訟による否認方法も用意されてはいます。

認知の効果

このように、子どもは親がどのような関係性にあるのかによって嫡出子とそうでない子とに分かれることになります。

このようなことから、親から見てその子が自分の子でないとすると、仮にその親が亡くなったときには財産を相続することができません

そういった、嫡出でない子がその親の子としての身分を得るにはどうしたら良いのでしょうか?

ここで登場するのが『認知』です。

民法(抄)

【779条】

嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

【784条】

認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。

このように、嫡出でない子であっても事後的に父や母からの『認知』によって子である身分を取得することができます。

そして、『認知』の効力は認知する前の子の出生時まで遡って効力を生じます。(遡及効)

『認知』は売買のような法律行為と異なり、一身専属の身分行為といえます。

そのため、認知能力には特別な規定が置かれています。

民法(抄)

【第780条】

認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。

また、『認知』は現実に行うほか遺言による方式でも行うことができます。

民法(抄)

【第781条2項】

認知は、遺言によっても、することができる。

そして、認知する相手となる子が既に大きく育っている時には、父や母からの一方的な認知は行うことができません。

民法(抄)

【782条】

成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。

このようなルールの下で『認知』が行われると相続の実務において大きな影響が生じます。

『認知される』ということは婚外子となるので、多くの場合、通常の家族関係の外にいる人が急に被相続人の子として相続手続きに関係します。

想像できると思いますが、事前に知らされていなかった家族にとってみれば、認知された子がいたことを知るだけでも衝撃を受けるでしょう。

さらには、被相続人の遺産を分ける相談においても、その認知された子も相続人の1人として加えなければならないということです。

このような認知の話はドラマを見ていると遠い世界の話と思う方も多いようです。

しかし、現実の相続手続きにおいては決して珍しいことではありません。

だからこそ、相続が起きたときは専門家による詳しい調査が重要となります。

相続手続きで迷ったら「そうだ、行政書士へ相談しよう」と気軽に声をかけてください。

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