農地転用が不要な場合
一般的に農地転用は非常に面倒な申請手続きであるという声が多いです。
では、農地である限り、どんな場合でも都道府県知事等の許可処分が必須なのでしょうか。
実は、いくつか農地転用が不要となる場面があるのも事実です。
今回は、農地の転用にあたり許可が不要な場合について記していこうと思います。
非農地証明(現況証明願)
農地は実際に転用されない限り、ずーっと農地のままでしょうか?
ほとんどの場合、農地は手を加えない限り農地のままでしょう。
しかし、現実には膨大な数の農地があり、耕作状況や所有者の管理状況も様々です。
そうすると、その中でいくつかは長い期間にわたって農地ではない状態になっていることもあり得ます。
例えば、耕作を放棄したことで雑草や雑木が生い茂り山林となっていたり、登記簿では農地ではあるが実際は宅地として建物が存在するということもあるでしょう。
そんな時に例外的に農地転用の許可不要となる措置が「非農地証明」です。
非農地証明を受けた農地については、農地法上の制限がかかりません。
これだで聞くと、できるだけ非農地証明を活用して農地転用申請を避けたいと誰もが思います。
しかし、使い勝手の良い非農地証明には長い経過年月が必要であり、市町村によって10年や20年という運用基準があります。
仮に現地が「山林」だとして非農地証明を受けようとするならば、少なくとも10年~20年以上前からその現場が「山林」の状態であったことを証明する必要があります。
証明には過去の資料や国土地理院の航空写真などを活用して立証するということが考えらえます。
ちなみに、遠い過去の時点で『無断転用』をしていたために、10年~20年以上も現場が宅地であったとか、駐車場であったということを証明することも考えられますが、悪質な無断転用の場合には単に年月の経過ということのみをもって非農地証明を取得しようとしても不可の場合もあります。
遺産の分割・財産分与に関する裁判・相続財産分与に関する裁判
農地の所有権を新たに取得するのは「売買」に限ったことではありません。
親が持っていた農地について、親が亡くなったことで子が引き継ぐことは多いでしょう。
また、協議上の離婚をした場合に夫婦の間で一方へ財産分与を請求することや、協議でまとまらない場合には裁判になる場合もあります。
そのような原因に基づいて農地の所有権を取得する場合には、農地転用の許可は不要です。
ただし、新たに農地の所有権を取得したら『届出』という簡便な書類提出だけはする必要があります。
時効による取得
民法では取得時効という制度があります。
民法(抄)
【第162条1項】
20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
【第162条2項】
10年間、所有の意思を持って、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
仮に他人が所有する農地があり、その農地を善意または悪意いずれにせよ事実上の占有をした場合に、10年間ないし20年間という時間の経過があると、時効の効果を援用することにより所有権を取得することができます。
その場合については、『原始取得』となり農地転用の許可は不要となります。
農地法はかなり強力な法律となるので、許可不要となる場合は限られてはいますが上記のような場合には一考の価値があるのではないでしょうか。
行政書士は単に申請や許認可に関する手続き代行だけでなく、民法・行政法など幅広い法令に関して知識を有しています。
農地の転用や手続きに行き詰って困った場合には、「そうだ、行政書士へ相談しよう」と気軽に声をかけてください。