よくある 遺言 の誤解7選
"遺言" は残さないという方によくある誤解ご存知でしょうか?
実は、このような "遺言 反対派" の方々とお話しする中で共通する誤解が多いことに気付きました。
本ブログでは、その「誤解」について焦点をあててご紹介していきます。
《 このページの目次 》
誤解➀ ウチには遺言を残すほど財産がない
「たいした財産ではない」というのは、あくまで本人の意見です。
当然、相続というものは本人が亡くなった後の手続きになりますから、財産のある・なしを決めるのは本人ではなく、相続人である残された家族たちということは肝に銘じておくことが重要です。
例えば、本人が「50万円ぽっちの財産」と思っていても、承継する側からすればノドから手が出るほど欲しいタイミングの場合も十分にあり得ます。
なので、財産のある・なしを本人(亡くなる人)が主観で決定して遺言を残さないのは非常にまずいのです。
別ブログでも記載しましたが、家庭裁判所での調停件数は5,000万円以下の財産額の場合だけで全体の約75%を占めています。
むしろ、「財産が少ないからモメる」のです。
誤解➁ 遺言を残したら子どもたちに見捨てられる
おそらく、遺言を作成したら「自分は用済みとなってぞんざいに扱われてしまうのではないか?」という漠然とした不安があるのではないでしょうか?
もちろん、ほとんどの場合お子さんがそんな風に思って遺言を作成するよう勧めることはないでしょう。
しかし、それでも自分の将来が不安になってしまう方には以下の条文をおさえて欲しいと思います。
民法(抄)
【第1022条】
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる。
【第1024条】
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
【第1026条】
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。
いかがでしょうか?
遺言は残された家族のために作成するものですが、あくまで遺言者の意思によって撤回ができます。
もし本当に、遺言を作成したあとにお子さんからの扱いがぞんざいになったとしたら、堂々と遺言を撤回してしまえば良いのです。
これを聞いて安心して遺言を作成したという方も大変多いです。
誤解③ 遺言を作成するには早すぎる(後でもいい)
基本的に遺言は心身の状態が良い時が最適なタイミングになります。
そもそも、遺言は本人(亡くなる人)が「遺言能力」を有している状態でなければ作成することができません。
いよいよ高齢になったり、病気になってから遺言を作成したとしても、場合によって相続人等から「遺言能力を疑う」と指摘を受けるかもしれません。その場合、もし本当に遺言能力が無かったと判断されれば、その遺言は「無効」となります。
実際、遺言能力が疑われるとして多くの遺言に関する裁判例が残っていることからも高齢の遺言が危険なのは明らかです。
つまり、正確に表現するなら、遺言を作成するのは早い(若い)ほうが良いということです。
誤解➃ ウチの家族は仲が良いから遺言なんて必要ない
家族の仲が良いのは大変良いことです。
しかし、一歩引いて考えてみてください。
いま、ご家族の仲が良いのは本人(亡くなる人)がいるからではないでしょうか?
そして、「相続は死亡によって開始する」ので、そこに本人はいません。
その場合を想像して不安を感じたら、死後も自分の代わりとなってくれる遺言は大変心強い家族円満の柱となる存在です。
誤解⑤ 遺言なんて作成したら縁起が悪くなる
おそらく、遺言が「死」を連想するキーワードのため、このように万が一が起きたときの原因を遺言と思い込んでしまう方がいるのかもしれません。
しかし、実際はあれこれ悩んでいたものが遺言という形でハッキリと表現されるので認識していなかったストレスを解消する効果があります。
また、遺言を作成するには全てを専門家へお任せという訳にもいかないので、自分なりに法律のこと、財産のこと、人生の振り返り、家族の将来のこと等、さまざまな困難を乗り越えていきます。
その意味では、後悔はなく、逆に爽快感や達成感すら感じることができるものです。
誤解⑥ 遺言を作成したら財産が一切つかえなくなってしまう
例えば、遺言に記載した不動産などについて、遺言に書いた以上は売買など処分することができなくなってしまうのではないかという心配が多いでしょう。
しかし、これについても思い込みであることを理解すれば全く怖くありません。
民法(抄)
【第1023条】
遺言の内容と抵触する生前処分の行為は、遺言を撤回したものとみなす。
仮に遺言で残した内容の財産を処分することがあったとしても、それは自動的に撤回したものとみなされます。
安心して遺言を作成して良いでしょう。
誤解⑦ 遺言を作成してもその通り実現してもらえるかわからない
遺言は遺言者がその内容が実現されるのを見届けることはできません。
既に遺言者が亡くなっているからです。
その意味では、遺言通りの内容実現が不確かという点は一理ありそうです。
しかし、このような場合には「負担付遺言」を検討してみてはいかがでしょうか?
民法(抄)
負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の額を超えない限度においてのみ、負担した権利義務を有する。
遺言の実行が担保されやすくなるなど、安心して遺言を作成できる方も多いです。
このように "遺言" についての誤解は非常に多く、世の中に広く蔓延していると言って良いです。
これらの誤解を解いた上で、是非、良い遺言を作成してみてはいかがでしょうか。
遺言の作成に迷ったら、「そうだ、行政書士へ相談しよう」と気軽に声をかけてください。