遺言書の種類

皆さんの身の回りに "遺言書" を書いている方はいますか?

正直、遺言書なんてTVドラマや小説の中の話と身近には感じていない方も多いのではないでしょうか。

遺言の種類は3種類

遺言の方法は法定されており大別して下記3パターンの方法があります。

"公正証書 遺言"

公証人が作成し証人2人以上が立ち会うもの

"自筆証書 遺言"

自分1人で手書きして作成するもの(よくあるTVドラマのやつ)

"秘密証書 遺言"

自分1人で手書き作成したものを公証人・証人2人に認証してもらうもの

実務で圧倒的に多いのは公正証書遺言

実務上で最もポピュラーなのは証明力が高いとされる "公正証書遺言" です。

その作成件数は統計データがあります。下記リンクを見てください。

令和2年の遺言公正証書の作成件数について【日本公証人連合会】

データを一読してわかる通り、全国で1年間に97,700人の方が "遺言書" を作成したことがわかります。

では、年間でお亡くなりになる方の総数はどれくらいだと思いますか?

これも全死亡者数の統計データがあります。下記リンクを見てください。

死因順位別死亡数【厚生労働省】

死因は色々ありますが、年間の死亡者総数は1,372,000人にのぼることがわかります。

とういうことは、1年間に死亡する方のうち公正証書の遺言を作成している方が7.1%しかいないということになります。

実際には、自筆証書での遺言や秘密証書での遺言もありますので、数%増加するでしょうが、それでも約10%にも満たない数しか遺言書は作成されていません。

これが、一般的に「遺言書なんでTVドラマや著名人の内輪だけの話でしょ」と皆さんが感じる原因かもしれません。

一般に浸透しない遺言

それなら、 "遺言" は一般人にとっては不要なものなのでしょうか?

実は、そうではありません。

"遺言" は非常に身近で、私たちの暮らしに密接した法律行為です。

遺言は、被相続人のみが行うことのできる法律行為です。

被相続人とは亡くなったご本人を指します。

遺言は、生前のうちに自らの財産を誰に取得させるか、引き継いでほしいかを、"自らの意思で決定" することができる唯一の手段といえます。

よく相続に関するワードで "法定相続分" とか "割合2分の1" とか "3分の1" などと耳にする方も多いと思います。

そして、さらには "相続" ではなく "争続" (あらそうぞく) などと揶揄されるように、残された家族がバラバラになってTVドラマ顔負けの骨肉の争いを繰り広げるイメージを持つことも少なくありません。

ですが、実はこれらの "相続" "争続" は "遺言" が作成されていないことで起きていることが非常に多いです。

逆に言えば、"遺言" が無い場合の相続において一定の目安となっているのが前述の "法定相続分" になります。

ですから、相続財産の処分・分割方法は "遺言" があるなら、あくまで "遺言" に従うことになります。

その場合には、基本的には "法定相続分" は関係ありません。

遺言をつくるには遺言能力が必須

そして、 "遺言" については、その作成上、重要なことがあります。

それが 「遺言能力」 です。

民法(抄)

【第961条】

15歳に達した者は、遺言をすることができる。

【第963条】

遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

遺言の作成にあたって民法は第一に年齢によって遺言能力の有無を線引きしています。

15歳以上の年齢になってはじめて、人は "遺言書" を作成することができます。

そして第二に、「その能力を有しなければならない」と定義しています。

この「能力」が一体何を指すのか、という点は抽象的であり、実際に紛争が生じて多くの裁判例があります。

例えば、「認知症」をはじめとする持病の影響があったのかどうか、本人が遺言書を作成する「動機」が正当なものかどうか、遺言によって利益を得る者から強制されたものでないかどうか、遺言内容を理解できていたのかどうか、など本当に遺言能力が疑われる要素は多種多様です。

つまり、"遺言" は 自分が元気なうち しか準備できないということです。

例)「認知症」について

認知症といっても症状の程度は様々です。単に、「認知症だから」という一点をもって遺言能力が無いとは言えません。

あくまで、「遺言作成時点」での本人の判断能力が重要です。

そのためには、医師の診断等が有効です。

実務ではよく「長谷川式認知症スケール」が用いられます。

このテストで30点満点中20点以下の時に認知症が疑われます。そして4点前後だと高度の認知症といわれます。

例)遺言作成の経緯について

被相続人が、なぜ遺言を作ったのか?

その経緯や動機が納得いくものであれば、遺言者が自分の意思で遺言したと考えられます。

亡くなった後に確実な遺言の実行を

このように、遺言能力や遺言の有効性には様々な要素が影響を及ぼしています。

"行政書士" のような士業や、公証人と証人が立ち会ったというだけで完全に有効とはいえません。

しかし、少なくとも我々 "行政書士" は遺言者である本人が望む財産の処分を叶えるよう日々注力しています。

"遺言" について少し考えてみようかなと思ったら、「そうだ、 "行政書士" に相談しよう」と気軽にご相談ください。

きっと、 "遺言" をすることで人生がスッキリと晴れやかな気持ちになれると思います。

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