相続のはじまり

このように、急に始まってしまうのが "相続" です。

いつの時代も人は必ず亡くなります。

残された家族・親族からすれば、亡くなってしばらくは呆然としたり、故人を偲ぶ時間が必要でしょう。

ところが、そういった家族・親族の心情や気持ちをよそに、"相続" は "開始" され刻一刻と「制限時間」が経過していきます。

相続の第一段階は「財産目録」

"相続" と一言にいっても、その手続きや検討すべき論点は膨大です。

何か一定のパターンや類型が決まっていて、 "Google検索" のように 「答え」 が出るのなら良いのですが、実はそううまくはいきません。

まず第一に、故人が持っていた財産・債務・権利・義務を正確に詳しく調査する必要があります。

そういった財産などの一覧を "財産目録" と呼びます。

ただし、亡くなる前に一覧にして整理している故人は非常に少ないです。

しかも、プラスの財産(不動産・預貯金・有価証券など)が残っているなら良いのですが、家族・親族すら知らなかったマイナスの財産(借金・未払金・税金など)が発覚して驚くパターンも少なくありません。

基礎控除の範囲を超えるのかどうか

そして第二に、故人に財産があった場合に "相続税" がかかるのかどうかを調べる必要があります。

相続税は相続される財産に即、課税されるというものではありません。一定の相続財産額までは課税されない "基礎控除" が設けられているからです。基礎控除額は下記の通り算定できます。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円×法定相続人の数)

/No.4152 相続税の計算 | 国税庁

基礎控除の範囲を超える財産が課税価格となります。

仮に、基礎控除の範囲内で収まってしまうなら申告も納税も必要ありません。

ここまでの計算をした上で、できるだけ相続税がかからないようにする方法がないかどうか調べることが重要です。

そこまで正確に検討して、ようやく、故人の財産から「誰が」「どの財産を」「どれだけ」相続するかを決める段階へ進むことができるのです。

"相続" という手続きに対して、多くの方が 「大変そう」「面倒くさそう」「難しそう」「モメそう」などネガティヴな印象を持っているのも理解できます。

相続でモメない!は幻想

「ウチは財産なんていう程のものは全然ないから "相続" のことなんて考えなくても大丈夫!」という声も多く耳にします。

しかし、司法統計という裁判所の統計データを見る限り、令和2年度でみても比較的、遺産の価額が低額とされる「5,000万円以下」が42.91%、「1,000万円以下」が34.73%となっており合計すると77.64%を占めます。

つまり、統計データからわかることは「財産が少ない相続ほどモメる」という事実です。

さて、そんな "相続" ですが始まってしまったものは止められません。

"制限時間" は残された家族・親族である相続人がどのような手続きをしたいのかによっても変わります。

論点が広がりすぎてしまうので、今回は民法上の話に限定します。

相続に関する3つの方法

例えば、相続手続きにおいて非常に重要な概念に"単純承認" "限定承認" "相続の放棄"という3つの選択肢があります。

これらを選ぶにあたっては「3箇月以内」という原則があります。

民法(抄)

【第915条】

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、(~省略)

故人が亡くなってから「3箇月」の "制限時間" 、どうでしょう十分な期間と感じますか?

私の体感として、ほとんどの方が「非常に短い」と感じているようです。

それはおそらく、残された家族・親族にも日々の生活がありますし、それぞれ仕事や学業などもあるでしょう。

たまたま故人が亡くなったからといって、そこから "3箇月" の間ずっと相続手続きに時間を費やすことができないのも当然です。

ここで登場するのが相続手続きを代行する "士業" のセンセイたちです。

相続を誰に依頼するか

相続手続きに関わるセンセイたちにはどんな名前があるでしょうか?

弁護士

言わずと知れた法律系最強のプロ資格者。

専門領域は「訴訟」。

相続手続きに関する業務は、「モメごと解決」の手続き全般を担当する。

例)遺産分割調停・審判、裁判など

税理士

確定申告に代表される税金に関するプロ資格者。

専門領域は「税務」。

相続手続きに関する業務は、「相続税」の計算やその確定申告手続きを担当する。

例)相続税の計算、税務面からの遺産分割相談、相続税申告など

司法書士

不動産に必須の「権利登記」に関するプロ資格者。

専門領域は「権利登記」。

相続手続きに関する業務は、土地・建物の「権利登記」の手続き全般や家庭裁判所への提出書類作成を担当する。

例)不動産登記、相続の放棄申述など

社会保険労務士

年金・保険に関するプロ資格者。

専門領域は「年金・保険」。

相続手続きに関する業務は、「故人の年金・保険」の手続き全般を担当する。

例)資格喪失届、埋葬料の請求、遺族年金請求など

行政書士

手続きに必要となる "書類作成" に関するプロ資格者。

専門領域は「なし」。

相続手続きに関する業務は、「相続人の調査」「財産の調査」「遺産分割」の手続き全般を担当する。

例)財産目録、遺産分割協議書の作成、預貯金の名義換えなど

以上が、一般に相続手続きに関係することが多い "士業" の種類です。

一覧してわかるかもしまれませんが、それぞれに特徴があり「専門領域」があります。

ただし、"行政書士" の場合、専門領域が広すぎてしまうため一応、「なし」と記載しました。

実際のところ "書類作成" という専門性は相続に限られないという特徴がその理由です。

"相続" 以外も含めて、法律行為に関する "書類作成" には高度の正確さが必須であるからです。

行政書士が担う相続の業務

"相続" が発生すると、相続人を調査確定したことを証する「相続関係説明図」が必要ですが、これは行政書士が専門とする "書類作成" 業務の1つです。

税理士さんが相続税を計算するにあたり「財産目録」が必要ですが、これも "書類作成" 業務によって作成されます。

不動産の名義換えや金融機関での預貯金の名義換えには、相続人の中で遺産の分け方を決定したことを証明する「遺産分割協議書」が必要ですが、これもまた "書類作成" 業務によって作成されています。

こういった "相続" という手続きの流れや士業それぞれの専門領域の関係上、私たち "行政書士" が最初の相談役となり、その後もファシリテーターとなることで、必要に応じて他士業のセンセイ方と連携していくことでスムーズな相続手続きを行うことができます。

もしも、 "相続" が始まってしまったら、「そうだ、 "行政書士" へ相談しよう」と気軽に声をかけてください。

そうすれば、安心して大切な相続手続きを完了できます。

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